【TPP反対 現場は訴える】『トラック運送も危機 愛媛の協会 ミカンなければ失職』|日本農業新聞3日

 「TPPに参加すれば、地域のトラック運送事業者も大きな打撃を受けかねない」。愛媛県トラック協会の兵頭謙太郎副会長は、松山市内で10月24日に行われた県要請集会でTPP交渉参加阻止への決意を表明した。

 “かんきつ王国愛媛”の温州ミカン。JA系統で6万8000トンを超える出荷量の75%が関東市場に向かう。愛媛―東京間900キロを結ぶのが地元の運送業者だ。主産地の南予地域に200ある運送業者では、ミカンをはじめ農林水産物が輸送量の5割を占める。

 県は、TPPに日本が参加すれば農林水産物の生産額が460億円程度減少すると試算。このうち農業は、2008年度の生産額の27%に当たる365億円減ると見込む。

 「運ぶものがなくなれば業界の淘汰(とうた)が加速する」。兵頭副会長は危機感を表す。

 兵頭副会長が社長を務める南豫通運では、年間輸送量の約3分の2の10万トンが農林水産物だ。5日間ほどかけてミカンを関東市場に運び、帰りに愛知県知多市で漁業用の飼料を積んで戻る。

 「ミカンを運んで生計を立ててきた」。同社の田口孝夫さん(59)は、JAえひめ南宇和島選果場で温州ミカンの積み込みをしながら話した。ドライバーを30年務め、今は積み込みを担当する。この間、2人の娘を育て4人の孫にも恵まれた。

 TPP問題を受けて田口さんが心配するのは、若手の行く末だ。3人の子どもを養うドライバー歴2年の男性(27)も「ミカンがなければ仕事はない。やめるしかない」と不安を募らせる。

 船や飛行機、電車などの輸送手段の中で最終目的地まで届けられるのがトラックで、運送業はライフラインの役割を果たす。交通網が発達していない地方はなおさらだ。東日本大震災では道路が寸断される中、「被災地で滞っていた物資を配ったのは地元の業者。いざというとき他の地域からは行けない」(兵頭副会長)のが実情。地域に密着した運送事業者の重要性は高まっているという。

 同協会は3月15日の理事会で、JAグループ愛媛のTPP交渉参加阻止運動に賛同することを決定。兵頭副会長は業界の淘汰が進めば「輸送サービスの低下も避けられない」と、地域への影響も指摘。「国内貨物の9割を担うトラック事業者が望むのは農業・工業・医療・サービスなど各分野の調和のある発展だ」と訴える。

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