『TPP交渉 米国文書漏えい 薬価見直し機会提案 医療費高騰の恐れ』|日本農業新聞3日

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で米国が主張した医薬品・医療機器などの価格決定についての提案とされる文書が漏えいした。各国の公的機関が行う新薬の認証や価格決定に対し、製薬会社などが見直しを迫られる仕組みの導入が盛り込まれている。TPPの国民生活への影響を指摘する市民団体や有識者から「薬価を低く抑える公的医療保険制度を脅かし、価格を上昇させる」など懸念の声が上がる。

 文書は、ペルーで10月28日まで開かれたTPP交渉で米国が提案したとされる。米国の環境や労働などの市民団体が組織する「シチズンズ・トレード・キャンペーン」が「手ごろな医薬品を買う消費者の権利を妨げる提案」と批判し、ホームページ(HP)に掲載した。

 文書にある(1)海外で承認されている新薬の安全性を調べる承認審査の合理化(迅速化)(2)価格決定について製薬会社などが見直しを求める機会の確保――などは、米韓の自由貿易協定(FTA)で韓国政府が受け入れた内容。ある日本政府関係者は「韓国政府がどこまで製薬会社の要求に従うかによるが、運用次第では医療費が高騰し、公的医療保険制度の根幹が揺らぎかねない」と警戒する。

 ニュージーランドにあるオークランド大学のジェーン・ケルシー教授は米国の市民団体のHPで「米国提案は(医薬品・医療機器の価格などを決める)危険で不明確なルールだ。受け入れれば、公的機関に対する(製薬会社などによる)訴訟の防潮門を開くことになり、医薬品価格を上昇させる」と警笛を鳴らす。

 公的医療保険制度の運用をめぐり、米通商代表部(USTR)は9月に公表した「医薬品アクセス強化のためのTPPでの目標」で、「公的医療保険の還付制度の運用で透明性と公平な手続きの尊重を(交渉参加国に)求める」と明記。TPP関係国の間で、医療の自由化を迫られる懸念が高まっていた。

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