『TPPで米国 事前協議を要求 ルール策定間に合わず “早期”論拠崩れる』|日本農業新聞3日

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉をめぐって米国が、日本が仮に交渉に参加する意向を示した場合、参加を認めるかどうか判断するには、米国との非公式な事前協議が必要だとの考えを日本政府に示していることが2日、分かった。事前協議には数カ月かかり、加えて最短で3カ月かかる米国議会の承認も必要だ。このため日本の政府・与党のTPP推進派が主張するように日本が早期に参加を表明しても、米国が正式合意を目指す来年6月には間に合わない可能性が高まった。

 複数の政府・民主党幹部が明らかにした。

 TPP推進派は「今、交渉に参加し、ルール策定に参画すれば日本に有利な条件を引き出せる」との理由で、早期の参加表明を主張。12、13日に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までに参加を表明するよう政府に求めている。しかしルール作りに間に合わない可能性が高まったことで、論拠が根底から崩れるとの指摘が出てきそうだ。

 事前協議は、参加希望国がどういう条件で交渉に臨むかを把握し参加を認めるかどうか判断するもの。米国が事前協議の必要性を示した背景には、日本の交渉参加に反対する声が自動車などの業界にあるため、議会の理解を得られるよう米国の利益になる条件をできるだけ引き出す狙いがあるとみられる。日本は非常に厳しい条件を突き付けられる可能性がある。

 TPP交渉は全品目の10年以内の関税撤廃が原則。金融サービスや知的財産など21分野が対象だ。日本の国民や各業界には、食品安全基準の緩和や医薬品、保険、共済、政府調達などの分野で米国に規制緩和を求められるとの懸念が強い。日本が米国と事前協議を始めた場合、条件が厳しく不調に終わるとの見方がある一方、厳しい条件でも受け入れざるを得なくなるとの指摘もある。米国では通商交渉の権限が議会にあり、承認手続きに最短で90日かかる。

 交渉参加9カ国はAPEC首脳会議に合わせた大枠合意に向け協議を進めており、日本の対応が焦点となっている。ただ民主党内では慎重派と推進派の対立が激化。「党内融和が崩れて政権運営に影響が生じかねない」(党幹部)との懸念も出始めており「非公式の事前協議」などを視野に着地点を探る動きもある。

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