『TPP交渉 ルール作り 参加困難 拙速な判断一層危険に』|日本農業新聞1日

 ペルーで19~28日に開かれた環太平洋経済連携協定(TPP)第9回拡大交渉で米国は、国営企業と民間企業の競争条件を公平にするための条文案と労働者に関する条文案を提示した。このことは、ほとんどの交渉分野で条文案に対して各国が意見を述べ、合意できない箇所を一つずつ、”つぶしていく”段階に入ったことを意味する。万が一、日本がTPP交渉に参加しても、ルール作りで新たな提案をするといった意見反映の機会が限られることになる。拙速に交渉参加するより、交渉の状況を見極め、国民議論を十分にしてから参加の可否を判断することの妥当性が高まったといえる。

 米通商代表部(USTR)は、第9回拡大交渉後の28日のプレスリリースで「(交渉参加9カ国の)交渉官は協定の法的文書について、さらに意味ある進展をさせた」と交渉の成果を強調。ペルーのバスケス首席交渉官も「交渉対象の21分野のほとんどで各国が示した条文案をベースにした議論が始まった」と述べた。

 日本が11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でTPP交渉参加を表明しても、参加国が突き付けてくる参加条件への対応をめぐる国内調整や、米国政府による米議会への事前通報といった手続きがある。このため、日本が実際に交渉に加わるのは来年の夏以降になる見込みだ。外務省幹部は「来年は2月以降、毎月交渉会合が開かれることもあり得る」とし、日本が参加するまでに、条文案に基づく交渉が5回ほど開かれる可能性がある。

 ある政府関係者は「交渉が進んだ分野では、途中参加の国が交渉の進展に逆行するような新規提案を行うことは許されない。ルール作りへの意義が薄れている現実を直視して、交渉参加の判断時期を考える必要がある」と話す。

 米国が国営企業などに関する条文案を出したことで、日本政府が株式を所有する企業(日本郵政グループや日本たばこ産業、NTTなど)と民間企業との対等な競争条件の確保が、日米の2国間協議(引用者注:日米経済調和対話のことか)だけでなく、TPP交渉でも取り上げられることが確実になった。

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