『TPP交渉 米国の目標 医療制度見直し要求 政府説明と矛盾』||日本農業新聞26日

 米国政府が、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で獲得する目標を列挙した資料に、公的医療保険制度の運用について「透明性と公平な手続きの尊重を求める」と明記し、同制度の自由化を交渉参加国に要求するとの方針を示していたことが分かった。米国は既存の自由貿易協定(FTA)でも医療制度への市場原理の導入を交渉相手国に迫り、一部の国では既に薬価が上がっている。医療制度の自由化を目指す米国の方針が明らかになったことで、同制度は交渉の対象外と説明してきた日本政府の情報の信頼性が問われそうだ。

 TPP交渉参加国の公的医療保険制度の見直しに向けた米国の決意は、米通商代表部(USTR)が9月に公表した「医薬品アクセス強化のためのTPPでの目標」に盛り込まれた。輸出先国での新薬の価格が高くなるようにすることで、米国系製薬会社の利益を確保するのが狙いとみられる。

 日本政府は、今月17日に公表したTPP交渉の国民向け資料で「公的医療保険制度は議論の対象になっていない」との見解を示したが、それよりも前に、米国が公式に医療制度の見直し要求を宣言していたことになる。

 米国は米豪FTAで、税負担で医療費を抑えるオーストラリアの医療制度を問題視。同国は米国との協議の結果、市場価格並みの高い価格が設定されるよう制度を見直した。米韓FTAでも、韓国政府が決めた医薬品の認可や価格に対して米国系製薬会社が「薬価が安すぎる」といった不服がある場合、決定の見直しを求める機関を設置した。

 米国有力紙の報道によれば、同国政府は、公的医療保険制度での薬価などについて、米豪、米韓の両FTAよりも厳格に「透明性と公平性」を確保できる規律を課すことを目指しているという。

 公的医療保険制度はTPPの議論の対象外としてきた日本政府の資料について厚生労働省は、本紙の取材に対して「交渉参加国との協議で得られた情報で作成しているため、(米国から情報提供がなかったUSTRの資料は)踏まえていない」(国際課)と述べている。

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