『「国民国家存続できず」研究者が講演』|日本農業新聞19日

 与党の有志議員らでつくる「TPPを慎重に考える会」が18日に開いた勉強会で、酪農学園大学の柳京熙(ゆうきょんひ)准教授が、米国と韓国の自由貿易協定(FTA)について講演した。韓国が薬剤の価格を自由に決められなくなったり、食の安全などのルールが自由に決められなくなったりする事態を挙げ「国民国家が存続できなくなる協定だ」と指摘。環太平洋経済連携協定(TPP)でも同様の条項が入る危険性を示唆した。

 柳准教授はまず、韓国は一部の大輸出企業が国内総生産(GDP)の多くを占める構造となっていると説明。そのため、韓国のFTA戦略をそのまま日本に当てはめるのは適当ではないとした。

 その上で、米韓FTA交渉を始める条件として、米国からいくつかの条件を突き付けられたことや、協定後も米国議会批准までに内容が変わったことなどを挙げた。

 韓国政府は医療や福祉は開放しないとしていたにもかかわらず、薬剤価格は米韓の委員会で決められることとなった。

 韓国が自由貿易推進のために行った農業支援では、規模拡大支援策による無理な農地取得が増える一方、農産物販売価格が下がったため、農家の負債が大幅に増えたと説明した。農地の1%が毎年転用されることで、自給率が急降下し、今後は米が自給できない事態も想定されるとした。

 韓国の実態を基に、TPPの議論でも「農業対工業の構図ではなく、国民生活を守る観点から議論する必要がある」と強調。「隣の国でこうした事態があるのに、なぜ火の中に飛び込んでいくのか不思議だ」とTPP推進派を批判した。

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