今日のシンポジウム【「原発」今こそ考えよう】出演:河野太郎 後藤政志 水野誠一
はとても面白く充実した内容だった。

後半の「これからのエネルギーを考える」で話し足りなかったことを補足しよう・・

「原発は何時になったら停められるのか?」という会場からの質問について・・・

原発は今すぐには止められない、と大概の人が思っている。
 原発無しでは電力不足になると信じているからだ。東電は原発に総電力の30%を依存している、中電は15%を依存しているなどと言われている。実はこれが曲者なのだ。
 現在、全国の発電設備能力で見ると、原子力は全体の18%でしかない。その原子力が、総発電量の28%を担っていることは事実だ。それは原発の設備利用率だけを上げて、火力発電所の52%を停止させているからである。原発が生み出していた電力を、すべて火力に置き換えても、なお火力の設備利用率は70%にしかならないと言われる。

 では、夏の電力需要のピーク時ではどうか。
 実は電力需要のピーク時でも、過去の実績で見ると最大電力需要量が、火力と水力の合計を越えたことはほとんどない。実際2003年、東電は、福島第一原発の不祥事によって首都圏に送電する原子炉17基をすべて停めたが、真夏でも停電は全く起こらなかった。

 そう!答えは「今直ぐにでも原発全炉停止できる」だ。
それには節電発電(ピーク電力を下げる知恵)と、現在稼働率を半分以下に抑えられている水力、揚水、火力(液化天然ガス)の稼働率を上げる事で凌ぎ、10年間で地熱利用など再生可能エネルギー開発とコストダウンを実現すれば、ハッキリ言って原発は要らない。

こう言うと、「火力に切り替えるとコストが上昇する」「代替可能なエネルギーはコストが高い」と反論する人が出てくる。
それは、原発の電気コストは安いというウソがあることを知らないからだ。

 このウソに騙されている人は非常に多い。なぜならばそれを電力会社が盛んにPRしているから。

 数値を見てみよう。
電気事業者連合会資料によると、
水力 11.9円 (揚水発電を除く一般水力)
石油 10.7円
天然ガス 6.2円
石炭 5.7円
原子力 5.3円
ということになる。

 これは、稼働率を80% に設定するなど、ある一定の条件を想定して計算した値である。つまり数値はあくまでモデル計算の結果である。
 実際の稼働率は、ご存じのように散々たるもので、敦賀原発第2号機が放射線漏れを起こした日本原子力発電に至っては、2011年5月7日現在、所有する全炉を停めることになっている。全炉停止の福島第一・第二原発を含めて現在54機の内、半分も稼働していない状態なのだ。まず80%の稼働率などあり得ない事がわかる。それは置いておいたとしても、大島堅一・立命館大学教授は、1970年から2007年の約40年間について、財政支出の国民負担(原子力交付金などの税金部分も合算したもの)を入れると、
1キロワット時あたりのコストは
原子力 10.68円
火力 9.90円
水力 7.26円
ということになる。
つまり、原子力が一番高いことになってしまう。

 だがこれも、原子炉の開発コストも、廃炉コストも、使用済み核燃料の最終処分コストも、まして事故の補償コストも入っていない、いわばランニングコストに近いものだ。先に述べたように、将来目処すら立たない最終処分コストが加わるだけでも恐ろしい数字になることは事実である。
 決して安い電力だなんて思ってはいけない。今回のように10兆円と言われる賠償コストが加われば天文学的な数字になるのだ。

一方、新エネルギーのコスト計算は、まだ普及前の現段階でのコストが使われている。
太陽光パネルにせよ、風力発電機にせよ、大量生産によってコストは大きく下がる。
こんな不公平なコスト比較をしていることを考えると、コストが高くなるとは言えないことが明白だ。

原子力のウソには、「3安のウソ」といわれるものがある。
すなわち「安全」「安価」「安定」のウソである。
「安全」のウソは、今回の福島原発事故で見事に覆された。
「安定(供給)」のウソも、事故前の稼働率ですら、建前の80%とはほど遠い30%程度でしかなかったことを考えれば、「安価」のウソも容易に分かるはずだ。

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