ゴールデンライス開発 栄養不足解消へ IRRIなど4機関協力 (日本農業新聞4月18日)

 国際稲研究所(IRRI)とバングラディシュとフィリピン両国の国立稲研究所はこのほど、国際的な非政府組織(NGO)ヘレン・ケラー・インターナショナル(HKI)と共同で、ゴールデンライス開発を進めると発表した。遺伝子組み換え(GM)を利用してビタミンAの元となるβ・カロテンを多く含む米品種を開発するもので、早ければフィリピンで2013年、バングラディシュで15年に政府に栽培の申請を行う計画だ。

 ゴールデンライス開発は大手のバイオテクノロジー企業が進めてきたが、人道目的に限定して特許技術の利用をIRRIに認めていた。すでに普通の米に比べてβ・カロテン含有量を増やすことに成功していたが、さらに含有比率を引き上げるなどの取り組みが続いている。

 バングラディシュとフィリピンの米研究所は数年前からIRRIとの共同研究を進めてきた。IRRIによると、ゴールデンライスの種子コストは在来品種と同等で、自家採種が可能だという。

 「IRRIは10年間にわたって、失明を防ぐため安全で効果的なビタミンA不足対策となるゴールデンライス開発を進めてきた」と説明するのは、IRRIで開発の責任者であるジェラルド・バリー博士。品種開発の作業は最終段階に入っている。ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団などの財政支援を受け、栄養面からHKIと協力関係を結びビタミンA不足解消にゴールデンライスがどのように貢献できるかを検討するという。

 HKIのナンシー・ハセロー副会長(アジア太平洋担当)は「奥地の子どもや女性などへのビタミンAの支援が遅れている。栄養補助剤の活用や多様な食生活の推進、母乳の利用促進などが求められており、ゴールデンライスが、持続可能なかたちでビタミンA不足に悩む人たちの役に立てばありがたい」と話す。

 世界中でビタミンA不足によって毎年67万人の子どもが死亡、35万人が視力を失っていると言われている。一方で、環境保護団体などは「ビタミンA不足を解消するためには貧困の改善でバランスのとれた食生活を目指すべきだ。ゴールデンライスのようにGM技術に頼るべきではない」と批判をしている。

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