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6th Apr 2011 from Twitlonger

「放射能はいらない! 食品汚染と生体濃縮」書き起こし。
1989年頃のドキュメンタリー番組。

■動画
http://vimeo.com/21914049
または
http://www.veoh.com/watch/v20137221zhGh5BTe
または
http://www.youtube.com/watch?v=-CeLnWq8rjs  1/4
http://www.youtube.com/watch?v=iBc0fDgScnI  2/4
http://www.youtube.com/watch?v=FSQMLt-E6T4  3/4
http://www.youtube.com/watch?v=KxeS4i02sv4  4/4

(参考:市川定夫さん)
http://www.gensuikin.org/gnskn_nws/0707_1.htm


■書き起こし
 このお茶は、放射能で汚染されている。1986年5月、チェルノブイリの放射能は、8,000kmも離れた日本に到達し、雨となってこのお茶にも降り注いだ。

三重県わたらい茶の汚染値(bg/kg)
セシウム137  118.5
セシウム134  62.9
ヨウ素131   925.9
ルテニウム103 129.6
ルテニウム106 32.2
----------------------
    計  1,269.1

 その直後に測定したデータでは、合計1,269ベクレル。このうち半減期の短い放射能のいくつかは減衰したが、まだこのお茶には200ベクレル近いセシウムが含まれている。

(タイトルテロップ) 「放射能はいらない! 食品汚染と生体濃縮」

 円高とグルメブームを反映して、今私たちの食生活には夥しい量の輸入食品が溢れている。その量は年間2,500万トン。日本人1人あたり1日600グラム。カロリー摂取量にすると、食品のおよそ半分を輸入に頼っている。国内メーカーの食品にも、知らない間に輸入食品が使用され、消費者には国産として売られている。食の国際化の名の下に、原産地も、どんな作り方をしているのかも分からない食品が大量に日本人の胃袋に吸収されているのだ。
 そして、チェルノブイリ原発事故以降、日本はヨーロッパ諸国からの食品輸入を大幅に増やし、甘い基準値と抜け穴だらけの検疫体制によって、大量の汚染食品が市場に出回ることを許してしまった。

※ 86年の輸入実績
スパゲティ        前年比30%増
ビスケット・クッキー類  前年比54%増
ソ連産はちみつ      前年比32%増
チョコレート       前年比40%増

 厚生省の輸入検疫など全く当てにならない。自分たちの命と健康は自分たちで守らなければならない。数多くの市民グループが食品の放射能測定を進めている。

日消連浜松グループ 馬場利子 「今までは、生産者や自分が選ぶ段階である程度無添加、無農薬のものが手に入りましたけれども、放射能の汚染に関しては、見た目でも、また生産者自身にも客観的な判断ができないということに大変な驚きを感じたわけです。もちろん、食品の放射能汚染に気づいたとき、私自身も測定器が持てるものなら持ちたいと思いましたが、お金、労力、技術的な問題があり、いったんは生産者や販売業者の方に測ってもらう方向に活動を展開していきました。けれども、自分たちの所にデータが来ないことがあり、これは自分たちでやらないと、科学的にものが言えない、国がやってることにまどろっこしい注文を入れるよりも、私たちは日々食べるものの科学的データが欲しい、それを子どもを育てている自分たちのような母親に一人でも多く伝えたい、ということで、自分たちで測定器を持つ方向に戻ったわけです。」

(パソコンに表示されたグラフを見ながら)
浜松放射能汚染測定室 渡辺春夫 「これが今日測ったフィンランド産のチョコレートのスペクトルですけれども、ここの塗りつぶされた部分、これがセシウム137、その隣がセシウム134…。このチョコレートから、キログラム当たり40ベクレル(40Bq/kg)程度出ています。このフィンランド産のチョコレートは、最近スーパーで安売りの目玉商品として売られていたものですが、100グラム1枚100円という、国産の半額で売られれています。非常によく出回っていますが、注意が必要かと思います。それから、他に測ったものではイタリアからのスパゲティですが、すべてから検出される状況ではありません。40ベクレル出るものもあれば、ほとんど検出されないものもありまして、そういう意味では消費者は選択が非常にしにくくなったと言えるんじゃないかと考えます。それから、これは食べ物ではないんですが、フィンランド産のピートモス(発酵土)から大体2,000ベクレル出る状況です。ピートモスの袋を見てもらえば分かるんですが、きゅうりに使ったりなど食用に使うこともあり、それを体内摂取してしまう状況も起こりうるので心配しています。」

馬場利子 「食品汚染を避けていればいいという問題ではなくて、なぜこれが引き起こされたかということにいくと思います。原発には国境がない、とよく言われますが、それはソ連から被害を受けたという事実ではなくて、私たちもすぐそばに浜岡原発など日本中に(原発を)抱えている。明日(原発事故の)現地になるかも分からないということで大変不安ですし、この便利な生活を維持するために、私たちは反対に何を失っているのかということを強く感じました。」

 チェルノブイリ原発が放出した放射能は、われわれのごく身近なところにその姿を現した。これらの汚染食品は人体にどのような影響を及ぼすのだろうか。例えば、国産の粉ミルクにはオランダなどから輸入された乳糖が使用されており、どこのメーカーのものでも2、3ベクレルは汚染されている。食品を選ぶことも、拒否することもできない乳児にとって、この汚染値はどういう意味を持つのだろうか。

埼玉大学理学部 市川定夫教授 「乳児は大人の100倍くらい感受性が違うから、赤ちゃんが2、3ベクレルのミルクを飲んでいるということは、大人が200~300ベクレルの食物を食べているのと同じこと。だから、決して無視はできない。かと言って、赤ちゃんが絶対危険かというとそうも言えない。確率的に起こる問題である。」

 埼玉大学理学部・市川定夫教授。ムラサキツユクサによる微量放射能の研究で世界的に著名な遺伝学者である。

――赤ちゃんで100倍だとすると、胎児の場合はもっと?
市川定夫教授 「妊娠後期の胎児と乳幼児は大体同じ。小学校に行っている学童が大体(大人の)10倍感受性が高い。その学童と比べて、乳児や妊娠後期の胎児がまた10倍(感受性が高い)。妊娠初期はもっと感受性が高いんだけども、逆に放射線に感受性が高すぎるために、ひどい傷がつくと流産しちゃう。結果として出てくるのは、妊娠後期とほぼ同じか、それよりもかえって少ない。」

 さて、私たちが知ることができるのは、ほとんどの場合、食品に含まれるセシウムの汚染値だ。だが、チェルノブイリ原発事故はセシウムの50~100倍も危険だとされるストロンチウム90も大量に放出した。しかし、こうした測定器では、β線しか出さないストロンチウム90は全く測れない。
 輸入食品には、ストロンチウム90は含まれていないのだろうか。

市川定夫教授 「原子炉の中での生成量から見たら、ヨウ素131の量を100とすると、セシウム137が大体7、ストロンチウム90が6ある。放出される瞬間は、100に対して、7、6の割合で出たはず。ところが、ストロンチウム90の方が(カルシウムと同じで)いろんなものと結合しやすいから化合物になって重いもんだから、近辺には落ちたけれども、遠くにはあまり行かなかった。だから、日本では、セシウムに比べてストロンチウム90の飛んでくる量は圧倒的に少ない。ところが、近辺の、事故現場に近いところほど、ストロンチウムはセシウムに匹敵する量がある。日本に来ている食品の中でも、事故の起きた現場に近いものほど、セシウムに近い量のストロンチウムがある。同じヨーロッパ産でも、遠いやつほど、セシウムに比べてストロンチウムがうんと少ない。そういう関係になっている。例えば、ブルガリアから来るバルクワインとか、パスタ類とか、そういったものを取り上げれば、(事故現場に)近いから、セシウムに比べてストロンチウムが半分くらい入っている、ということはありうる。」

 では、ストロンチウム90はなぜセシウムの50~100倍も危険なのだろうか。

※ 主な放射性核種の生物学的半減期
放射性核種     決定器官   生物学的半減期
----------------------------------------------------
セシウム137     全身     70日
カリウム40      全身     60日
ヨウ素131      甲状腺    138日
ストロンチウム90   骨      50年
プルトニウム239   骨      200年

 これは、体内に入った放射能が排泄によって半分に減る期間を主な放射性核種で比べたものだ。セシウム137は、排泄によって70日前後で半分になるが、ストロンチウム90は骨に入り、50年経ってもまだ半分しか排泄されない。つまり、取り込んだら最後、ほぼ一生涯放射線を被曝し続けるということである。 では、放射能はなぜこのようにその種類によって体内に集まる場所や、そこに留まる期間が違ってくるのだろうか。それを知ることがすなわち、放射能の本当の危険性を知ることである。


■「放射能の生体濃縮 ヨウ素131の場合」

 86年5月3日、チェルノブイリの放射能はジェット気流に乗り、わずか1週間で日本に到達した。雨、大地、野菜、水道水、牛乳、母乳など、日本国中ありとあらゆるものが放射能で汚染された。
 その中でも特に濃度が高かったのがヨウ素131である。

※千葉の雨水     13,300pCi
 茨城のほうれん草  10,300pCi
 福井のヨモギ    16,000pCi

 8,000kmも離れた日本で、これほどの汚染値が検出されようとは誰も予測できなかった。測定器が壊れたかと思うほどの放射能に数多くの関係者が度肝を抜かれたのである。

[市川教授の講義から]-----------------------------------------------
 370ベクレル(Bq/kg)というのは10,000ピコ(pCi/kg)という意味。つまり、この頃、今の輸入制限値の前後かやや高い値(の放射性ヨウ素)がたくさん日本に降った。8,000km離れたこの日本にたくさん放射性ヨウ素を降らせた、あの事故はね。このヨウ素は放射能の半減期が8日。厳密には8.06日です。
 ところで、8日でどんどん減っていくはずのヨウ素がどういう濃縮を起こしたか。今から図を書いて説明します。これは西ヨーロッパの場合。縦軸にヨウ素131の濃度。汚染度と考えてください。横軸は10日刻み。一番早いところでは、4月28日深夜から降り出した。どういうカーブになるか。
http://twitpic.com/4hgo8y
 1つ目は、5月1日頃にピークがあり、8日で半分、8日で半分というふうに減っていったカーブ。これは、大気中に塵として存在したり、雨水の中にあったヨウ素の濃度です。環境中のヨウ素ということで「環」と書いておきます。こういうカーブを描いたんです。これはWHOから得たデータです。地域によって幅がありますから、絶対値は入れません。相対的な値として考えてください。
 (これに対して、2つ目のカーブは)1つ目の「環」と同じく5月1日頃にピークを示して、その後だんだん落ちていった。そのピーク値は「環」のグラフの4~5割。ところが、5月の半ば頃から急にぐーっと上がり始め、6月1日頃には(5月1日頃の値と比べてさらに)6~7倍ものピークを付け、そこから8日で半分、8日で半分と減っていった。これは、野菜、牧草、植物のカーブ(「野・牧」)です。これこそが「濃縮」なのです。
 とにかくヨーロッパでこういうことが起こった。問題は日本。日本政府はどうしたか。皆さん覚えてますかね? 日本政府、科学技術庁は(1986年)5月19日に記者会見をしまして、「環境中の放射性ヨウ素がどんどん減ってきたので観測を打ち切る」と言いました。5月22日でもって全国での測定を打ち切る。5月22日のデータが最後です。5月19日に打ち切りを宣言して、22日に(実際に)打ち切った。
 さて、ヨーロッパは4月28日に(放射性ヨウ素が)降り出したのに対して、日本は5月3日から降り出した。5日遅れです。5日遅れの日本で5月22日ということは、ヨーロッパに直せば5月17日です。(5月17日頃「野・牧」グラフの数値は直近で一番低くなっている。)今から野菜や牧草の値がどんどん上がるというその直前で観測を打ち切った。僕たちは、「もっと続けるべきだ」と申し入れました。だけど、聞いてもらえなかった。どうして打ち切られたのかが国会の質疑にもあります。
 日本は絶対値はヨーロッパより少なかった。しかし、同じパターンは見られた。日本で見られた(5月1日頃の)13,000ピコキュリーが、ここ(6月1日頃)では、何万ピコキュリーにもなった。ここ(5月1日頃)ですら、今の基準値を超えていた。(だとすれば、)ここ(6月1日頃)では今の基準値をはるかに超えている。
 科技庁は重々知っております。日本で5月6日頃ピークがあったら、次のピークが6月6日頃に来るということは知っている。(ところが、)あえて打ち切った。国会の質疑で何と答えているか。「日本はいずれにしてもヨーロッパに比べて数値が低い」と。「すぐさま健康に影響のあるデータではない」と。「こういう高いピークが現れることを国民が知ることによって、神経質になりすぎて食事を食べなくなったり、ノイローゼになったりする方が健康上問題が大きいからやらなかった」と(受講学生から盛んに溜息)。そうじゃない。(黒板のグラフを指して)こういう事実を知られたくなかったから。
 これを知らなくても、あれは朝日も、NHKも、毎日も、読売もそうだったですが、初めて「原発反対」という世論が5割を超えたんです、この事故の後。もしこれを知ってたらもっと変わったでしょう。この辺(5月半ば頃)で行った調査で5割超えた。
 しかもここ(5月19日)で、特にある新聞が、「科技庁『安全宣言』」という見出しを出しちゃった。打ち切ったのを「安全宣言」と。ですから、これまで気持ち悪いな、と思ってた人も、ここ(6月頃)で、バリバリ食べ出した。皆さんの中でもそういう人いると思う。5月は食べなかったけど、6月は安心してさっさと食べたという。牛乳はさらに3日遅れでヨーロッパでも(影響が)出た。なぜかというと、牧草に入って、それを牛が食べて、牛乳に出るのに3日時間のズレがあるから。
 科技庁の彼らもヨーロッパのデータを手に入れているのにどうして出したがらないかというと、これ(6月のピークはもっと高くなるという事実)があるから。
 こういうことで、ヨウ素は本当に早く濃縮するんです。早く減るんですが、早く濃縮する。それで、事故の後ヨウ素が一番心配された。皆さんもご存じのように、ヨウ素は私たちの体に非常に早く入ってきます。植物にも非常によく入ります。植物の場合は、空気中から植物の体内に何百万倍にも濃縮します。われわれが今まで出ているデータには、200万倍ないし1,000万倍濃縮します。 われわれ人間がこれを食べると、ヨウ素は甲状腺に集まるわけです。植物の場合は、組織で活発に成長しようとするところとか、花を作ろうとするところに集まるわけです。人間の場合は甲状腺に集まる。甲状腺でヨウ素を使って、成長を促進するホルモンを作り出して、子どもが成長する。大人の場合は、体の調子を維持するためにヨウ素が使われる。
 成長にヨウ素を必要とする子どもの方が、大人よりも甲状腺に集める速さはずっと速い。学童、小学校くらいの子どもたちは、大人の10倍速く甲状腺にヨウ素を集める。乳児や妊娠後期の胎児は、学童のさらに10倍速くなる。従って、乳児と大人を比べると100倍も速さが違う。
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 赤ちゃんや胎児にとって、甲状腺は心身の成長を制御しホルモンを分泌する大切な器官である。そこに放射性ヨウ素が集まるとどのような障害を起こすのだろうか。それはほとんど解明されていないが、生まれつき甲状腺ホルモンの分泌に障害があるために起こる病気として、クレチン症(別名:先天性甲状腺機能低下症)がある。表情に乏しい、不活発、便秘がひどいなどの症状が特徴で、放置すると発育障害を起こす。つまり、体の発育が遅れれば身体障害、知能の発育が止まれば知能障害になる、恐ろしい病気である。
 このクレチン症の赤ん坊が、スリーマイル原発事故の翌年には、その周辺地域で平常時の4倍以上との報告がなされている。
 また、アーネスト・スタングラス博士は、スリーマイルの風下地域で、新生児の死亡率が40~50%も異常に急上昇したとの研究報告を発表した。
 では、スリーマイル原発事故では、どれだけのヨウ素131が放出されたのか。公式発表での最大値は、事故2日後に周辺の牧場から集めた牛乳から1リットル当たり36ピコキュリー。
 一方、86年5月、日本での測定値は茨城の原乳から310ピコキュリー。新聞には発表されなかったが、島根の原乳からは687ピコキュリー。また、輸入の配合飼料ではなく、屋外で草を食べていた千葉のヤギ乳からは2,350ピコキュリー。これらの発表データを信じるとしたら、ほぼ日本全域で、スリーマイル周辺の10~20倍の汚染があったことになる。
 ※原乳のヨウ素汚染
  スリーマイルの最大値 36pCi/l
  86年5月日本の最大値 678pCi/l
 はたして、日本の幼い子どもたちはどのような影響を受けたのだろうか。


■「人工放射能は蓄積する ~セシウムの場合」

 甲状腺に集まるヨウ素に比べ、セシウムは食品と一緒に体内に入ると、やがて腸管から吸収され、血液の中に入り、全身に広がって、特に筋肉などに蓄積する。その化学的性質はナトリウムやカリウムに似ており、体内に入っても比較的速く排泄される。セシウム137は、自然放射能のカリウム40とかなりの共通点を持った人工放射能である。
 では、どこがどう違うのか。

[市川教授の講義から]-------------------------------------------------
 (放射性核種である)カリウム40は、地球上に存在するカリウムのほぼ1万分の1です。1万分の9,999は放射能のない安全なカリウムなんですが、1万分の1の割合でカリウム40というのがある。でも、皆さんが1年間に受ける天然の放射能から受ける被曝のほとんど大部分はこのカリウム40。次に多いのがラドン。ラジウム温泉やラドン温泉に行かれると、その被曝がちょっと加わる。
 地球上の生物はカリウムによく適応しています。カリウムはどんどん体内に入っていくけど、どんどん出ていく。入るスピードと出るスピードが同じ。われわれの体内にカリウムを蓄える器官、組織は全くありません。植物にもない、動物にもない、微生物にもない。カリウムは三大肥料(窒素、リン酸、カリウム)の一つです。絶対必要なんですが、どんどん取り込んでどんどん出して、循環させている。なぜか。カリウム40という悪戯者が混じってるから。生物がカリウムを体のどこかに蓄えると被曝が大きくなって不利ですから、そういう生物は栄えなかった。現在の生物はそういう不利な性質をもたなかったから今生き延びているわけです。
 さて、天然のセシウムには放射能はないんですが、カリウムと性質がよく似てますから、セシウムは体の中にどんどん入ってくる。そして、カリウム同様どんどん出ていく。しかし、問題がある。われわれの腎臓は、カリウムに対しては、入ってきたのと同じスピードで排出する能力を持っているんですが、セシウムに対しては排出する能力がちょっと劣る。胃壁や腸壁を通して入ってくる速さはどちらも同じなんですが、出ていく速さが少し遅い。例えば、100入ってくる度に1残る。そうやってだんだん溜まっていくのがセシウム。じわじわ時間をかけてゆっくり増える。
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http://twitpic.com/4hgn6z
(「人体中のセシウム137 ラップランド人とウィーンの人」)
 ラップランドの人たちは、事故から1年も経って体内のセシウム量が急激に上昇した。87年8月には5万ベクレル。9月には10万ベクレルという例も報告されている。
http://twitpic.com/4hgo8y
(「西ヨーロッパで見られたヨウ素の濃縮」)
 ヨウ素はわずか1ヶ月で生体濃縮したが、セシウムはこのように長い時間をかけてゆっくりと体内に蓄積する。
 では、食品のセシウム汚染はいつまで続くのだろうか。

市川教授 「セシウムは、多年生植物の場合はまだまだ増えていく。1962年に部分核停条約[=部分的核実験停止条約、LTBT]が調印されて、63年以降大気圏内の核実験が米ソ英によって止められた。仏中はまだやったけど。で、62年に駆け込みの大気圏内核実験がもの凄くやられた時に、環境中のセシウムがピークに達した。環境中のセシウムは、62年末から63年が一番多かった。ところが、植物体、特に多年生の植物体の最大値はその5年後に来ている。というのも、セシウムはゆっくり体に入ってきて大部分は出ていくんだけども、循環するうちに一部が残ってだんだん濃度が高くなる。だから、ヨーロッパのデータ見ても、今まだ高くなってるのは、お茶、ナッツ類、月桂樹の葉なんかは、今検査してるから日本に入ってくるものの数値は低くなってきてるけれども、ヨーロッパのデータを見るとますます高くなっている。その代わり、一年生(植物)の小麦などの値はだんだん低くなっている。(スパゲティなんかは?)結構下がってる。」
――多年生というと、具体的にリンゴなど果物は全部そうですか?
市川教授 「果実は全部そう。つまり、生育期間が長いほど溜め込む時間が長くなる。」
http://twitpic.com/4hgmco
(「人体中のセシウム137 日本人」)
 生育期間の長い人間も同じことである。日本人の体内にもセシウムはじわじわと蓄積されている。事故から1年目の時点でおよそ60ベクレル。事故前の3倍に増えている。果たしてこのグラフは、どこまで上昇するのだろうか?

 (原発)推進派は、放射性物質が体内で濃縮することは認めながらも、排出もされるので一定量以上は濃縮されないと強調する。放射能はビタミンCなどと同じようにいくら食べても一定量以上は排出物と一緒に出ていってしまうので、体の中にどんどん溜まってしまうのは嘘っぱちだ、というのだ。
 一体、「それ以上濃縮されない一定量」というのは何ベクレルなのだろうか?

市川教授 「どんな生物も新陳代謝してるわけだから、あるところまでどんどん濃縮していく。で、飽和といって、それ以上その元素が要らなくなると、一定の割合で捨ててまた新しく取り込んでいく。飽和になったら一定量に達する。これはもう当然のことなのよ。ところが、問題なのは、飽和に達するほどたくさん放出しているものは実際にはないわけ。放出している量は彼らの言う通り微量なのであって、どんどん上っているところでしかわれわれは接してないわけ。だからね、飽和まで行ったら大変なんだよ。飽和まで考慮してるみたいな言い方してるけど、飽和するまで放出されたら困るし、飽和まで達したら困るんでね。彼らは全ての核種のこと分かってるみたいに言ってるけど、飽和点が本当はどこまでなのか。どういう核種がどこにどう入るのか分かってるのは数えるほどしかないのよ。ある程度分かってるのがヨウ素、ストロンチウム、セシウム、コバルト。マンガンも。あと他に、亜鉛、セリウム、カリウムとか、そういうの全然分かってないもん。そういうのいくらでもある。彼らは分かってるものについて評価しているだけで、分からないものについては一切除外してるからね。例えば、原子炉の安全審査でも、分かってる核種については評価するわけ。分かってないのは書いてないからね。」

 推進派の言い分にもう少し耳を傾けてみよう。370ベクレル(キロ当たり)の基準値ギリギリに汚染された輸入食品を1年間食べ続けたとしても、その被曝線量は4ミリレム。全く心配のないレベルである、と。

市川教授 「今のICRP(国際放射線防護委員会)が使っている計算式を使えば、例えば370ベクレルの食品食べ続ければ4ミリレムになると。でも、その出てくる4ミリレムという数値は、全身の平均被曝だと考えてもらってるわけ。合計で4ミリレムというのじゃなくて、平均して頭のてっぺんから足の先まで全身くまなく4ミリレム浴びてるという意味だからね。合計が4ミリレムだという意味では絶対ないから。そのうち、セシウムの場合は筋肉の線種が大きいと。一番極端なのは、アルファ線を出すプルトニウムとかポロニウム、ウランの場合で、そういうのは入った(表面の)1ミリの何分の1の距離だけに被曝を集中させて、そこの被曝はもの凄く大きくなる(が、平均すると小さめの数値になる)。だから、ICRPの計算式では、ネズミ一匹に100万分の1グラムのプルトニウムを与えても1%程度しか癌が出ないはずなのに、実際は(癌が)100%出ると。レムで示される内部被曝というのは、全身だったり、1つの臓器の平均値でしかない。それ以上計算で求めることができないから。体内被曝については、きっちり把握する方法が今のところ無い。こんなに複雑な人間の体を細かく計算することできないから、仕方がないので人間の平均体重を60kgとして、60kgの球として計算するわけ、今の評価法は。そんなもんなんだよ。」

 レムという単位は、仮定の置き方でどのようにでも変わる評価値にすぎない。ところが、推進派はこのレムを持ち出し、輸入食品に含まれる放射能や、原発が日常的に放出する放射能をことさら自然放射能と比較してみせる。このような比較に意味があるのだろうか?

[市川教授の講義から]------------------------------------------------
 原発を推進する側は、いつも人工放射線と自然放射線との比較をやる。でも、私たちが本当に比較しなきゃならないのは、人工放射性核種と自然放射性核種です。例えば、カリウム40といったものは天然に昔からあったわけです。そういう自然放射性核種があったら、それを(体内に)蓄えないというふうにしてあらゆる生物は適応していた。天然のカリウム40を蓄えない生物が生き残ってきた。自然放射性核種に適応してない生物は一つもいません。
 ところが、ヨウ素。天然のヨウ素はすべて非放射性だから、われわれは安心して何百倍も濃縮したし、安心して甲状腺に集めて利用したわけです。安全だったから。安全だった元素に、(人工の)放射性核種を作ったら駄目なんです。濃縮するやつを考えてみますと、今までその元素には放射線がなかった、そういう元素で放射性核種を作ったときに濃縮する。
 セシウムもそう。セシウムも、天然のものがカリウムと一緒に入ってきても、低い放射性ですから何も怖くない。ところが、原子炉でこんなもの(放射性のセシウム137)を作り出すもんだから、じわじわ蓄えられてしまう。
 ストロンチウムもそう。天然のストロンチウムは非放射性で、カルシウムに性質が似ていて、カルシウムが入ってくるところにいつでもストロンチウムが入ってきます。天然のストロンチウムが入ってきたって一向に構わない。非放射性ですから。ところが、原子炉の中で放射性のストロンチウム90を作ると、骨の中に入っちゃう。ストロンチウム90も半減期28年ですから、0歳の時に骨の中に入っちゃうと、その人が28歳になってもまだ骨の中に放射能が半分残ってる。中から被曝を与える。ストロンチウムが入ると、白血病や骨髄がんにかかりやすいというのはそれなんです。骨に入って至近距離から骨髄とかに(放射線を)照射してるわけですから。
 それまで放射性核種のなかった元素に放射性核種を作ったときに濃縮するんです。それが人工放射能の濃縮。われわれが進化と適応の過程で1回も遭遇したことがない。原子力が始まってから初めてできたものに対して、われわれは適応を持ってない。
 昔は人工放射線も自然放射線も同じだと考えられていて、それも一理あった。私もそう習ってきたし、そう思ってきた。なぜなら、ウランの人工放射性核種も、天然の放射線核種も、出す放射線はいずれもα線かβ線かγ線で同じ。出す放射線は同じ。最終的に生物に傷を付けるのは放射線ですから、放射線が同じなら、人工でも自然でも同じじゃないかと昔は考えていた。
 ところが、それは間違ってた。挙動の違いがあった。濃縮するか、しないか、という違いが。それが分かった後なのに、推進側は、「人工放射性核種と自然放射性核種」ではなく、わざと「人工放射線と自然放射線」を持ち出して、放射線の問題にしている。
 人工の放射線でも、医療の放射線や宇宙からの放射線を出してきて、人工にも自然にも差はありません、とやる。ここでは差はないんです。だけど、問題は、放射線が同じか違うかだけではなかったんです。放射線を出す能力を持った核種が、われわれの体内で蓄積するか、しないかの違いだったんです。
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・人工放射能は体内に濃縮・蓄積する
・自然放射能は体内に濃縮・蓄積しない
 ヨウ素131やセシウム137、ストロンチウム90といった人工放射能は、生体内に濃縮・蓄積し、生物がこれまで適応してきた自然放射能とは比較できない影響を人体に及ぼす。
 この認識をベースに、放射能は人間の体にどのような影響を及ぼすのかを考えてみよう。

■「放射能の人体への影響とは」

 われわれの体は50兆から60兆の細胞が集まってできている。その細胞の一つ一つには「核」と呼ばれる小さな袋があり、その中には「DNA」と呼ばれる細い2本の糸が対になって螺旋状に巻かれている。このDNAには4種類の分子が10億個もつながり、小説1万冊相当の情報がびっしりと書き込まれている。これをわれわれは「遺伝子」と呼んでいる。
 DNAは細胞分裂の直前に「染色体」と呼ばれる46本の束にまとめられるが、そのうちの2本ずつは同じ形をしている。実は46本の染色体のうち、23本は母親から、残り23本は父親から受け継いだものである。DNAはわれわれの命の本質にほかならない。
 人間が人間であることも、このDNAから読みとられた情報の一つである。2本足で歩くこと、手を器用に使うこと、ものを考えること、笑ったり泣いたり豊かな感情を持っていること、これらの情報はDNAを通じて親から子どもへ正確に伝達される。DNAの役割はそれだけではない。今この瞬間にもあなたの全身全ての細胞の中で、DNAは生きる上で必要な様々な反応を絶え間なくコントロールしている。つまり、われわれが生命活動を行うために欠くことのできない全ての情報がDNAにインプットされているのだ。DNAが「命の設計図」とか「命の本質」と呼ばれる所以である。
 この録音テープをDNAだとしよう。流れている音楽こそ命である。そして、この小さな磁石を放射能だとしよう。その磁力が放射線である。微量の放射能は、体の外にある場合、全く問題はない。だが、体内に入った場合は、至近距離からDNAを傷つける。すなわち、命の本質を破壊するのだ。命の情報テープは放射能によってたやすく傷つけられてしまう。放射線の一粒子がDNAの一部分をはじき飛ばしてしまうのだ。その傷がほんの小さなものであっても、生物にとっては致命的な損傷になり得るし、大きく傷ついたDNAはもはや元には戻らない。DNAに起きたこのような変化を「遺伝子の突然変異」と言う。

■「放射能による障害とは」

 では、放射線によって遺伝子に傷がつくと、何が起こるのだろうか。
 人間は胎児から幼児、大人になるまでの成長期には細胞が盛んに分裂して増えていく。しかも、細胞が分裂するときには、DNAが傷を受けやすくなっている。すなわち、放射線によって引き起こされる障害は、細胞分裂の盛んな若い人ほど起こりやすいということである。
 DNAに傷を受けても、その細胞がすぐに死んでしまえばそれほど大きな障害は起こらない。問題なのは、その細胞が生き残って増え始めたときだ。傷ついた細胞が2つに分裂し、2つが4つになり、4つが8つになり、やがて10億以上の塊になったとき、われわれは初めて体内の異常に気づくことになる。すなわち、がん細胞の発見である。
http://twitpic.com/4hglne
(「核実験以前に対するがん死亡の増加率(日本全国の5~9歳男児)」のグラフ)
 これは、日本がん学会で発表された、日本全国の5~9歳男児のがん死亡増加率。大規模な核実験がある度にがん死亡率が跳ね上がり、1965年には核実験をやらなかった頃と比べて6倍も増えている。人工放射能が環境中にばら撒かれ始めて子どもたちのがんは急増した。
 厚生省のデータを見てみよう。悪性新生物(がん)は、うなぎ登りに増え続けている。子どもたちとて例外ではない。園児や学童の間でも、がんは急速に死因の上位を占め始め、10~14歳の学童では死因のトップ、22.6%を占めている。既にがんが成人病であるとの認識は捨て去らなければならない。
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(「発ガン分布図」)
 放射線によってDNAが傷つけられてからがんになるまでの期間は、数年のこともあれば、30~40年かかることもある。そして、がんになっても、その原因が放射能であることは決して証明できない。
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(「年齢別発ガン危険度」)
 ただ、確かなことは、幼い時に傷つけられた細胞ほどがんになりやすいということ。そして、放射線によって起きる病気は、決してがんだけではない。

■「放射能による健康障害」

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(「原発労働者の被曝状況(日本)」グラフ)
 日本では既に50万人の労働者が原発と関わり、数多くの下請け労働者が、「原発ブラブラ病」という訳の分からない病気に苦しめられている。
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(「福島原発下請け労働者の自覚症状」)
 体がだるく、疲れやすい、風邪をひきやすい、たちくらみがする、といったその自覚症状は、広島・長崎の被曝者を今もなお苦しめている症状と共通のものである。特に被曝によって免疫機能が低下することは、疫学調査でも確認されている。

■「免疫機能とは」

 免疫機能とはどのようなものなのだろうか。
 鶏肉は放っておけば2日位で腐ってしまう。これは、その肉に様々な細菌やカビが取りつくためである。ところが、生きている鶏が腐るということは決してない。生物には免疫機能があり、体の中に入った細菌やカビなどを懸命に殺しているからだ。
 同じように、バイ菌だらけの中で暮らしている人間が生きていけるのも、生まれながらにして免疫機能を持っているからである。
 人間は、病原体が体の中に侵入すると、それに対抗するための物質を作り、それを殺したり、体の外に排除してしまう。体の中に入ったこうした異物のことを「抗原」と呼び、異物に対抗する物質を「抗体」という。抗原と抗体の戦争が始まると、体の方も熱が出たり、痒くなったり、だるくなったりする。この状態が病気である。
 では、その免疫機能をコントロールするのは何か。
 ノーベル賞を受賞した利根川進博士は、遠く離れたDNAの断片が数百個も集まり、任意に組み合わさることによって、数億種類もの抗体が作り出されていることを証明した。つまり、人間の防御システムはすべて遺伝子がコントロールしているのだ。

市川教授「全ての生命現象は遺伝子の働きの結果。つまり、DNAの設計図通りにアミノ酸が並べられていろんなタンパクが作られて、そのタンパクが体をこしらえたり、体の中のいろんな反応を進める酵素として働いたりする。体の調節をするホルモンタンパクになったり、抗原抗体反応をする免疫タンパクになったりする。あるいは、血液の赤血球の中にあって酸素を運んでくれるヘモグロビンになったり、われわれが目で見るようにするロドプシンというタンパクを作ったりする。遺伝子の設計通りにタンパクができ、そのタンパクが全ての生命現象をやってるんだから、生命現象というのは結局はDNAの働きの結果だと言える。
 DNAが変化すると生命現象のいろんな変化が出てくる。例えば、ある酵素ができなくなると、ある反応が進められなくなる。ある抗体を作るところである部分が欠損すると、特定の抗原に対して抗体ができない。したがって、体が弱くなる。細菌感染症にかかりやすくなる。で、バクテリアには比較的強いけど、特定のカビには弱くなるとか。それから、特定の消化酵素が十分できなくなれば、胃腸が弱くなる。それから、肝臓は非常に重要な働きをして有毒物を無毒化しているんだけども、その時もいろんな酵素が絡んでいて、そういう酵素がちゃんとできなければ、有害なものが体に入ってきても無毒化できない。したがって、ひ弱な体になる。突然変異というのは、形だけじゃなく、ありとあらゆるものが起こりうる。」

 チェルノブイリ原発事故直後のヨーロッパでは、花粉症など様々なアレルギー症状が急増したとの報告がなされている。
 アレルギーとは、体内に入った異物に免疫機能が過敏に反応してしまうことによって起きる症状である。
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(「年度別小児花粉症初診患者数 佐久総合病院アレルギー科(18歳未満)」)
 近年、日本でも激増しているスギ花粉症や、幼児のアトピー性皮膚炎といった病気が、核実験やチェルノブイリの影響である可能性も決して否定できない。

市川教授「抗体を作るDNAのどこかに傷がついていれば、タンパク反応はうまくいかない。過去に一度(異物が)入った経験があって、新たに入ってきたとき、既に準備してある抗体で対処するんだけれども、その抗原抗体反応が過度に起こったときアレルギー反応が起こる。例えば、ペニシリンを前に打ったと。しばらく打ってなかったが抗体がたくさんできている。そこにまたペニシリンを打ったらショック死してしまう。これはアレルギーの極端な例だけれども。抗体を作りだしてるのはDNAの遺伝子なんで、遺伝子に欠損があれば、それは優性劣性関係ない遺伝子だから、次の代でもそういう欠損が出うる。」
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(1989年1月30日毎日新聞一面「原発労働者 2倍近い染色体異常」の記事)
 放射能による障害とは、がんや白血病だけではない。命の本質であるDNAが破壊される以上、ありとあらゆる障害が予想されるのだ。そして、放射能による障害で最も深刻なのは、そうした遺伝子の損傷が確実に子孫に受け継がれるということである。

■「放射能の遺伝的障害」

 1927年、H・J・マラー(1890-1967)は、ショウジョウバエに色々な強さのX線を当てて、放射線遺伝学の基礎となる重要な発見をした。その中で最も重要なのは、「突然変異は照射線量と正比例の関係で増加する」ということだ。すなわち、「どんなに微量の放射能でも遺伝的な障害は起こりえる」ということである。
 さらに、1958年、ラッセルは、数百万匹のマウスと十数年の歳月をかけた実験から、「少しずつ浴びた放射能でも、生殖細胞に被曝すると、蓄積して障害を現す」ことを発見した。つまり、汚染食品を食べれば食べるほど、遺伝的な障害を起こしやすいということである。
 しかも、女性の卵巣はセシウムを非常に集めやすい特性を持っている。

市川教授「男の人の場合は、仮に生殖腺の被曝を受けて、ひどく傷めつけられた精子ができたとしても、一回の受精に関与する精子の数は億単位だから、ひどく傷めつけられた精子は受精に関われないという受精競争という現象が起こる。けれども、女の人の場合それは一切起こらない。1月に1回排卵される、その卵がたまたま傷を持っていればそのまま直接(影響が)いく。だから、女の人の場合の方がセシウムは気をつけなければいけない。」

 人間の細胞は、すべて1個の受精卵が分裂を繰り返してできたものである。もし、母親の卵細胞のDNAに一文字でも間違いが起きれば、その間違いは産まれてくる子どものすべての細胞に正確にコピーされる。放射線によるDNAの損傷は、親から子どもへ、子どもから孫へ、幾世代も受け継がれていくのだ。
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(「世代あたりの1グレイの影響(100万新生児あたり)」のグラフ)
 しかも、放射線による突然変異は大部分が劣性であり、隠れたまま幾世代も伝わっていき、遺伝的な障害が目に見えて現れ始めたときにはもはや手遅れなのだ。
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(「核実験とチェルノブイリの放射性降下物比較」。86年のセシウム137が突出して高い。)
 われわれ人類が自らの手で作った人工放射能を環境にばら撒き始めてから、まだ四十数年しか経っていない。そして、チェルノブイリ原発事故は、それ以前に環境に放出された人工放射能を一挙に倍増させた。もはや手遅れなのか。それともまだ間に合うのか。

市川教授「…放射線の出る量が少なくても、優性突然変異といって、17歳までに死んだり(優性致死)、統計処理の仕方によっては相当数差が出る。優性突然変異ですら起こっている、ということは、劣性突然変異はもうとっくに起こっている。ただ、まだ世代が進んでないから、それがまだ見えてないだけということ。世代が進むほど、それがだんだん見えてくる可能性がある。だけど、突然変異やがんで困るのは、これはこの放射線によって起こった、と特定できない。他の原因によっても起こりうる。これはチェルノブイリだ、これは広島の原爆だ、これはコーヒーのカフェインだ、そんなふうには区別できない。また、環境が一般的に悪化してきているから、いろんなことで突然変異が起こっていて、それが出てくる可能性はますます高まっている。自然の生物であれば、そういう遺伝子を持つと、ハンディキャップを持っているために淘汰される。人間の場合は、医学で助けるし、社会的にも助けるし、そうしなきゃならない。人間の場合は「淘汰圧」が非常に低くなっているから。で、突然変異率が上がっているんだから、当然集団の中のそういう遺伝子の頻度はどんどん高くなっている。原爆が使われたり、原子力使ったり、環境変異をたくさん出すことによって、生物学的には人類が危機に瀕している、という表現はできるわけね。」

 これから生まれてくる世代の命を守るために、今私たちにできることは何か。残された時間はほんのわずかなものであっても、決して諦めてはならない。
 いずれ、原発は使われなくなるだろう。われわれの子どもや孫たち、そして子孫は、原発を受け入れてしまったわれわれを許してくれるだろうか。
 見せかけだけの豊かさや便利さと引き換えに、私たちが見失ってしまったものを今一度取り戻さなければならない。この無邪気な命と笑顔を守るために。
協力:
市民運動・生き活きネットワーク
まだまにあうならを読み広める会
浜松放射能汚染測定室
浜岡原発に反対する住民の会(増田勝)
音楽: 下木原靖彦(100CLUB) 田村真理子
CG: 吉田篤史 奥野雅之
ナレーター: 那波一寿
演出: 根暗一郎
撮影: 石本馨
プロデュース: 日野雄策
企画・制作: BAP
(終)

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