2011.1.30 ジムロジャース グローバルマーケットセミナー @東京  

<1部> 榊原英資氏 元大蔵官僚 青山学院大教授

米国の現況>現在のアメリカのGDPは3.2%、短期的には回復基調にあれど、先進国特有の国家財政の大きな問題をはらんでいる。

欧州の現況と見通し>一方、ヨーロッパは統合の歴史を繰り返してきた、EU設立、欧州中央銀行誕生、統合と復興を目指していたが、ここにきて解体への動きも出てきている。理由はギリシャやアイルランドの危機の出現で、特にギリシャなどは復興不可能なレベルの話。年金廃止、公務員削減、財政再建をできる見通しがない。
そこで、アメリカ同様ヨーロッパ経済が低迷、衰退していくシナリオが前提にある。

米国のリーマンあとの功罪>95-2006年にかけてルービンが行ったドル高政策が短期的に成功、住宅価格3倍、ダウ3倍、金融バブルができた。が、ここが弾けて、主要銀行5行のうち、3行が破たん。残ったのがGSとモルスタ。しかし、これらの銀行のBSも非常に打撃を受けて、現在に至っている。根深い。

国債格下げについて>元大蔵官僚としては、今回の格下げは非常に遺憾。日本の前に米国が先でしょうと正直思う。日本には家計の金融資産が国内にあるので、まだ他国に比べてバランスは良いはずだ。しかし、4-5年は良いとしても、どこかで消費税を上げる必要がある。5-10年のうちに上げる必要がある。

中国、インドの台頭>インド経済が非常に成長してきている。インドや中国が経済の主役になることは実はそれ程、珍しい事ではない。実は19世紀の初めのGDPを計算した学者がいたが、それによると、19世紀初頭は中国とインドで世界のGDPの約半分を占めていたのが事実。その後、英国や欧州諸国の植民地化で、この構造が逆転。つまり、歴史は繰り返すのです。そして、その時代がこれから来ようとしている。中国は暫く8-10%の成長を維持すると見込んでいる。中国を独裁主義と非難する人はいますが、実は一番発達している資本主義国家と感じる。独裁者ではなく、主席が10年ごとにちょうど入れ替わり、すべて官僚政治主導のルールのある、資本主義国家である。したがって、非難されるような崩壊の可能性はない。(例えばエジプトのような)
一方、インドの将来性は明るい。世界で一番人口が増えている。2050年で中国14億、インドは16億。2025年頃には米のGDPを中国が抜く。


インドの中産階級>インドの中産階級は13億のうち2億程度。今後はまだ増加。インドは日本と非常に仲が良い。実はインドで英語を話す層は2割程度、あとはマイナーの言語の集まり。英語を話す層はインテリ層。財閥はタタグループとリライアンス。IT企業で有名であるが、米欧のバックオフィス業で飛躍的に発展。これから製造業、(タタのナノ車)でどんどん成長してくる。中国もインドもインフレが激しいが、金利を引き上げてやっていく状況がある程度継続的に続くだろう。

中印の経済成長を通じて見えて来るもの>両国の中産階級の爆発的な伸びにより、エネルギーと食糧の需要が高まるのは必然。所得の向上に伴い、肉食へのシフト、それが飼料の高騰へ繋がる。これは10年のうちに間違いなく起こると予測している。しかし、日本政府はそこについては鈍感であり、検討すらしていない。日本の食糧自給率は40%。これをもっと引きあげる努力をしないと、大豆すら輸入できなくなり、豆腐すら食べられない。真剣に考えるべき。 中国と日本はお互い、なくてはやっていけない存在に。
アセアン諸国が一緒に動く時代に。東アジアの経済の活性化が日本にプラスになっていく。それと同時に、金融世界の時代から、実物経済商品の時代へ。

<第二部>ジムロジャース氏登場

来日して楽しんだこと>日本にきてうな重と神戸牛のステーキを食べました。今まで、いろんな所でステーキを食べたが昨日が一番と言っていいほど美味しかった。日本は美味しいものがあるので、大好きだ。

子供について>僕は若い頃は子供はお金、時間、エネルギーの無駄と思って子供を持つことに積極的でなかった。しかし、今はそれが間違っていたことに気付き、当時子供を持つ友人に対して失礼な感情を持ったことを謝りたい。子供は素晴らしい、人生の一番の楽しみでもある。24時間一緒に居ても飽きない。子供がいない人にはぜひ勧めている。日本人女性も子供を持つのを避ける傾向にあると思うが、そうではないことを伝えたいし、それが引いては日本の将来に非常に重要であることも伝えたい。

日本の将来について>残念ながら日本の将来については非常に危機感を抱いている。このままでいけば本当に深刻な事態に直面する。高齢者過多人口の分布モデルがまずいけない。出生率の低さが加わって、5-10年後は大変シリアスな状況に陥るだろう。日本政府は早くに①出生率対策 ②移民政策 に着手すべきだ。何度も言うが私は日本が大好きだ日本円にも日本株にも投資しているし、現在は増やそうとも思っている、しかし、このままでは5-10年後に日本に投資しているかは非常に疑わしい。長期では心配だと断言する。

中国経済について>中国は経済大国は事実。西洋諸国はこの事実を批判的にとらえる事もあるが、事実は事実。今後も長期的に勝ち続けるだろう。だからこそ、僕からのベストアドバイスは子供、孫には中国語をぜひ教えてあげて下さい。中国に関しては、今はかいたしてはいないが、次のチャンスが来たら買いたそうと思っている。人民元はなかなか買えない通貨ではあるが、チャンスがある時には買っている。

USDの今後>一方USDは、どんどん弱くなっていくだろう。明らかに価値を失っていく酷い通貨である。それはポンドを見ればわかる。娘はアメリカ人ではあるが、アメリカに口座はなく、全てアジアの国口座しかもっていない。USDについては、持っている分に関しては次に一時的にUSDが強くなったときに全て売るつもり。それはそんなに遠くはないと思う。日本円については数年間は強くなると思っている。

国債、株式について>僕は国債はどこの国も持たない。ですから、ボンドのマネージャーは是非転職をすることを勧める(会場笑)。株式については2年3カ月間買ってはいない。

日本株式について>日本の株式はいまターゲットあると言える。(今は非常に安いから)、個人的にはサンリオ、トミーを保有。ここ1カ月で日本株のインデクスを買おうと思っている。暫く欧米では株を買う予定はない。新興国株に関してはショートで売却した。新興国のETFはお勧めの一つだと思う。もう一度言うが日本の株はlooks good。 アジア全体が伸びているので、日本株はその良い影響を受けて、上昇するだろう。

アジア経済について>今は正に債権国はアジアに集中して、世界の資産が集まり、欧米が債務国となっているバランスをみれば明らかだ。それは一目でわかるだろう。僕は4年前にNYの自宅をうり、アジアに引っ越してきた。

投資対象>今のメインはコモディティーと通貨。食料危機は現実に起こりえるし、いくつかの政府は倒れるかもしれない。それはインドネシアやエジプトで起こっている事を考えればわかるだろう。コモディティーの時代は今後15-20年続くだろう。つまり商品の時代だ。80-90年代は商品には投資していなかった、しかし、今は状況が違う。油田も枯渇してきている、食料も世界中観ても酷いレベルに来ている。農家も減少している。僕にしてみれば農業が一番HOTな仕事だ。20年先の仕事で一番HOTなのは、金融でなく農家や鉱山業、石油業になってることは間違いない。つまり実物資産で稼ぐ人が有利になる。MBAなど取りにいかずに、農業オーナーになるべき。(笑)実際娘たちは既にコモディティを持っているし、彼女たちもそれを理解しHAPPYでいてくれている。娘は1USDさえ持っていない。全てコモディティー。あとは、通貨。もし世界経済が良い方向に行けば、商品はもっとあがるだろうし、不況になれば株は何の役にも立たない、つまり実物資産に頼ることとなる。つまり、どちらに転んでもコモディティーには有利なのだ。不況に陥って政府がすることは、PRINTING MONEYしかない。その方法しかできない国はそれをするしかない一方で、実物資産を保有する国は強くなるだろう。コモディティが一番。世界経済が↑でも↓でもコモディティが一番有効。ではどの商品が一番良いか、、それは農産物である。まだ安いレベルと言える。そして、残念ながら戦争が起きてしまった場合も、実物資産が一番強いと言うことは明白であろう。

日本株の今後について>日本株は悪くない。僕はインデクスからはじめようと思う。それと、期待しているのは旅行株。日本には優れた四季と観光に適した資産が沢山ある。今後アジアの人々が日本を訪れる時代がくる、非常に旅行業は注目だ。それと円建てのコモディティー株。

◆ 榊原氏との対談形式での質問タイム◆
S氏::東アジアの経済統合により、日本は間違いなくこの先伸びていく。日中の経済がドライブになるはず。
R氏::若い世代は過去の日中間の悪い感情衝突がない。お互い仲良くして、新しい時代を作るべき、それと消費税上げる前に、やはりもっと国内の削減をすべきと思う。
S氏::農業改革が一番の課題。農地法を改正し、もっと幅広く企業が参入でいるシステム作りを。そして、農業改革+観光業改革で日本を立て直す。
S氏::(円安になれば商品があがるだろうという円安支持の質問者に対し)、僕はアメリカがドル高政策を採っていた頃は、強調介入による円安誘導は有効であったと思うが、現状は各国が通貨安政策を採っている状況。政府が期待しても、効果がでない、出せない状況。個人的には、アジア圏の強い経済と共に、さらなる上昇シナリオを予想している。ならば、円高を利用して、海外で事業をしたり、海外を買収するなどの方法が望ましい。円高のメリットは海外のモノが安く手に入り、生活水準の維持が可能。予想では70円代に行くのもあり得る。
R氏:米ドルの崩壊についてだが、(デフォルトの可能性を聞かれて)アメリカはあるタイミングでデフォルトの可能性があると予想している。紙幣を増やしてそれを繰り返しているのだから、、。それが続くと、米国債を買わない、ドルを買わない事態が遠い将来でてくるかもしれない。米も英国同様国債売れず、IMFに助けて貰う可能性がでてくるかもしれない。それと同時に、農業危機が訪れるかもしれない。政府は農業産業を支援していかなくてはいかない。

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