何清漣氏論文;@HeQinglian:
『中国の社会安定秩序維持政策の変化と政治的管理の強化』 日本語全訳

《前文》
①今年の国際社会の将来の中国に対するイメージは10年10月の中国共産党第17期中央委員会第5回全体会議(五中全会)が分水嶺だった。

②これ以前、多くのメディアは中国の未来図には楽観論だらけ。政治体制改革が重点、とか温家宝の政治体制改革に希望敵観測であった。

③だが、十月中旬、中共五中全会では政治体制改革にはちょっと触れただけ。くわえてノーベル平和賞がひき起こした中共の激烈な反応で、国際社会もやっと当分望み無し、と気がついた。

④とはいえ、まだ平和賞騒ぎが終われば多少は緩和されると期待する向きもある。現在の厳しい中共の政治管理姿勢が果たして臨時的な措置か長期政策化を論考する。

《本文》

①;2010年10月11日、中共党内の老幹部の李鋭、胡绩伟、李普、江平等23人が「全国人民大会委への公開手紙」で中共が憲法35条の実行を要求した。審査認可制廃止、追加懲罰制廃止、言論と出版の自由の実現である。

②この自由化要求の公開手紙のニュースはネットで広範に知れ渡った。従来、中国政府は黙殺してきた。が、最高の党機関紙「人民日報」と「求是」はあえて23人を名指しせず反駁。名指ししない理由は当然この23人の老幹部の存在を”宣伝”することを嫌ったからである。

③10月21日人民日報;「言論出版の自由を如何に認識するか」”法治国家は国家の安全と社会の安定を脅かす言論に対し法によって対処する。決して放縦させない。我が国も法に依って処理する」とのべた。

④この文章は完全に中国の立法権は党によって独裁支配下にある事を回避しているのが重要ポイント。中国の法律はすでに支配集団の統治手段に過ぎず、このような”法”をもって言論の自由を論じること自体がすでに誤謬である。



⑤; 《求是》雑誌には趙強の菜で、「言論の統制を失敗するとソ連の二の舞」として「ゴルバチョフの改革でソ連の数十年の努力による社会主義思想の防壁は数年で崩壊。改革→自由な報道→外国の介入→暗黒面暴露→群衆不満→制御能力失墜→政権崩壊→国家解体。前車の覆轍を踏まず、我々はこの罠にハマらない、と述べた。

⑥;上記機関誌は中共の報道の自由に対する基本的見方。これを理解するのにこの時期の相次いだ弾圧に注目をすべきだ。11月2日、湖南省の《潇湘晨报》編集長らが十月30日の”辛亥革命100年特集”で停職。理由は「あてこすり」。

⑦;《潇湘晨报》の記事内容は「中国近代史は壁を越えようとするものと壁を作るものの対抗史で、壁が高くなれば超えようとするものも増える、ということ。これが「翻牆」をあてこすったもの、と睨まれた。また11月20日には雑誌《炎黄春秋》もパージ対象になっていると言われる。

⑧;(社会安定政策の調整について)ますます厳しさを増す安定社会政策に対して、外国ではノーベル賞への過剰反応とみている。しかし、私はこれは5中全会後の次期中国指導者層がこれまでの方向を転換するのだとみている。

⑨;5中全会までは中国の異議申し立て人士のグループも姿勢によって区別があった。穏健で政府と協力して和解をしようという人々には一種の活動が許される余地があった。この人々も認めている様に、活動はポーランドの労組「連帯」より自由であった、と。

⑩;だが劉暁波のノーベル賞受賞で中国政府が激烈に反応した。劉の妻劉霞は外との連絡を断たれ、家族は授賞式に出席できず、徐友渔、崔卫平のチェコでの活動は職場の防衛担当に阻止された。

⑪;同時に中国政府は授賞式に対しても各国に出席しない様に要請するなど騒ぎを起こした。11月5日、外務省副大臣の崔天凯は欧州の国々に対し、12日の授賞式に出席したら『相応の報いを覚悟せよ』と警告した。。

⑫;外務省/崔天凯はは「欧州国家の選択は中国の法体系に挑戦する政治ゲームをるか、中国人民とともに責任ある真の友好関係を築くかである」とした。この影響の下で、ロシア、カザフスタン、キューバ、モロッコ、イラクなど5国家が平和賞授賞式の招待に対し、参加拒絶。

⑬;中国当局はノーベル賞を”零落”させる為に、”阻止名簿”を限りなく拡大。中国人民大学の何光滬教授が招待名簿にあったため11月19日シンガポールの学会に行く時、北京公安局に「出入国管理例2条8項により国家安全に危害がある」と空港で出国阻止された。

⑭;さらに馬鹿馬鹿しいのは、上海のある企業の社長である丁丁は、ただその父親、丁東が当局に、異議人士的である、とみられているという理由だけで出国を許されなかった。

⑮;元々、異議人士として完全に活動の余地を奪われている人々は更にひどい目にあった。重病の陳光誠は出獄後帰宅しても非人道的な終日監視下に、曾金燕の北京事務所は”税務問題”で強制閉鎖され、北京に集まっていた人権活動家は強制的に原籍地に送り返された。


⑯;約20日間軟禁、監視、尾行された人には北京の弁護士许志永、江天勇、李方平や上海の馮正虎。艾未未は07年上海市に700万元のアトリエを建設したが『違法建築』として取り壊し命令。7日の蟹宴会にも軟禁され出席できなかった。


⑰;メラミンベビーの父趙連海は十日、北京市の裁判で懲役2年半の判決。30万の被害者ベビーの命と健康は政府の監督責任なのに、最後には「訴えたものが罪を着せられる」という無茶苦茶な結末。中国の法律の枠内での人権擁護の路が突き当たりに達したことを示した。

⑱;この一連の攻撃で范亜峰は当局に狙い撃ちされ12月9日、連行され音沙汰無し。家は何度も捜索され研究所から銀行カード通帳などを没収されて、妻の呉玲玲も逮捕すると脅され母親も監視中。范は相当危険な状態にある。(*訳者注;その後釈放されたが、監視軟禁状態で、12月18日には訪問した弁護士達が暴行をうけた)

⑲;最も注目すべきは中共中央と国務院が11月30日にだした「都市居住委強化への意見書」。明確に居住委の人員経費、報酬、隣組情報電脳化などの予算を計上。これは毛沢東流人民戦争方式で最底辺から「秩序管理」を開始するものである。


⑲;(次期最高権力者に予定されている)習近平は最近、重慶を視察した際、市協賛等書記の「唱紅打黒」=悪をやっつけ、正義を実現=に高度のお墨付きを与えただけでなく、江北区の居住委の党建設などの仕事ぶりを視察した。

5中全会でなぜこんなに急変?;

⑴;中国穏健派人士がノーベル賞授賞式後にこのような管理体制が緩むことを期待しているが、私は政治経済情勢および次期指導者習近平の分析から、それはない、と見る。


⑵;習近平が引き継ぐ中国は中共の宣伝する”調和繁盛の世”などではない。09年から”調和安定費”は5千億元(6兆円強)からも証明される。GDP世界2位でも平均収入は103位、GDP中の政府の取り分は32%、”税負担苦痛指数”は世界2位。

⑶ この5年来、毎年、群衆性の事件は10万件以上、08年に中国全土では124000件の群衆騒動事件が発生。中国政府の国内治安費は軍事費用を超えている。この2年では住宅高騰とインフレでさらに増加。政府の言い方では経済が混乱すると、政治への信頼が薄れ、暴力に訴えるケースが増加と。

⑶ 習近平が中共指導者の後がまになれた理由のひとつが”政治的に頼りになるヤツ”ってこと。権力を弱める改革とか口にせず、強力な”秩序維持能力”で中共を安心させた。現在胡温両名は下車態勢。多くのことが既に習近平が指揮。最近の一連強硬路線は彼の特徴である。

⑷ 中国ウォッチャーは07年以後習近平が中央政治局常任委員と国家副主席になった事しか注目せず、彼が五輪指導グループの長だったことと、五輪安全保障モデルに巨大な人とモノをつぎ込んだ事にあまり注意を払ってない。

⑸ これらのシステムは日常監視用。式典とか特に用心すべき日、天安門事件の日とか人民代表会議とかには、さらに私服の警官、保安要員を大量動員し、さらに”積極分子”のボランティアらで”人民戦争”方式で一切の可能性のある反対勢力を消滅させる。

⑹ 6つの網と至る所に居る私服と特務が五輪安保も出る。これが五輪期間中、発生しそうな可能性のあった反抗の防止に成功したため全中国に拡大され、2010年の上海万博や広州のアジア大会でもこのモデルが採用された。

⑺ 習近平は公衆の面前で話すことを好まないが発言は率直である。ある取材に対し「時にはテーブルを叩くことも必要だ。そうしないと相手が震え上がらないし、こちらも重用視してもらえない」と言った。

⑻ また08年五輪では中国の人権問題で外国から指摘されても「他人が喜ぶかどうかは我々とは無関係である」と述べた。世界は広くなんでもあり、であって鳥かごの中の鶏が煩ければ、鶏をどこかにやってしまえば鳥かごは静かになる、というわけだ。

⑼ 09年メキシコ訪問の講話では彼の国際社会における中国人権問題と独裁制への批判に大いに不満を持っていることがわかる。「肚一杯で暇人の外国人がいちいち我らに指図する。中国は革命を輸出せず、貧困と飢餓を輸出せず、君たちを困らせてないのに、何をごちゃごちゃいうのだ」と。

⑽ 今年の11月、習近平はシンガポール訪問時に「中国が永遠に覇権を求めない」というのには前提がある、それは国際社会が中国の核心的利益、すなわち中共の統治権ーを尊重することと、中国の人権状態に対する批評を差し控えるということだ、と述べた。

⑾ 中国は人治国家である。最高指導者は集団体制ではあるが、最高指導者として、その個性は必然的に政治生活に影響を与える。言行から見た限り、既に現在習近平は内政外交で強攻策路線をとり、内には弾圧を継続し昔ながらの”乱を治めるに重罰をもって挑む”方針のようだ。

⑿ 外交方面では習近平は、西側世界において 江沢民の様に自分をモダンぶったり、まして胡錦濤のような襤褸を出さないよう意見を自制などしない。各国は近い将来、習近平の統治法は「鉄鋼会社」を経営するような”おカタい”傾向であるとわかることだろう。(終)


以下出典(略)

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