何清漣氏の「中国はまた世界を煙に巻くのか?」日訳


 今年のアジアは穏やかでなかった。南海や黄海で米、韓、日の演習の後に、「アジアの覇者」を目指す中国がついに「中国が米国に替わって覇権を握るのは神話」と非公式ルートで中国が漏らしたのである。

これは中国外務省の国務委員・戴秉国((たい へいこく/外務大臣)が言い出した。当然、国際社会は一種の”中国式観測気球”とみる。御得意の”顔色外交”である。ただ今回は「いい方の顔」を見せただけ。

疑いなく現在、各国の外務省と情報機関はこの戴大人の外務省のネットから新華社ネットまで即座に掲載した重要論文ー『”覇権を唱えず、争わず、ならず”が中国の基本国策・戦略の選択である』を真剣に翻訳しているはずだ。

しかし、わたしはもっと早くに中国がその野心を露にした、10年後に米国に取って代わって世界一になる、という国務院発展研究センター発表の『中国の公衆と在中国外国人の目に映った中国の国家的地位観』というアンケートを連想した。

調査結果は10年後に中米両国は依然として世界の指導的パワーだが、過半数の中国人は中国が米国を凌駕すると答えた。この項目は「世界の覇権を握る」を「米国を超す」と言い換えただけ。政府が10年後の世界一を自認しているのはみえみえ。


中国人のこういった考えは長年新華社の報道や「環球時報」などによって培われたもので、またインチキ外国人専門家によってもよく言われる。例えばLegatum Instituteの04年Joshua Cooper RamoのThe Beijing Consensusがある。


この「「北京コンセンサス」」は翻訳され猛威を振るい、この中共イデオロギーと歴史観はアメリカの自由民主の価値観に取って代わると喧伝され、作者の外国人という立場と海外帰国組の訳者と宣伝者によって、多くの若い人達を煽動し惑わしたものである。


今年3月から12月の間に、中国政府はなぜ180度の方向転換?”民意”に名を借りて10年後に米国を追い越し世界の指導者に、と言っていたのが突然、頭を垂れて”覇権を求めず争わず”という変化である。

2月のコペンハーゲン気候会議以後、「中国は発言するときには大国風をふかせるが、責任を果たせといわれると自分は発展途上国だという”といった非難に対処せざるを得なくなった。

続いては、西側世界が人民元切り上げについていつまでも文句を言うのに対処せざるを得ず、アジア太平洋地区と隣国の領土問題については、この10年、”周辺外交”で、カネをばらまき良い関係を、という政策を取ってきた。

ところが、釣魚島問題で世界の反応をちょっと試してみたり、北朝鮮の韓国挑発などが起こるや、たちまち東南アジア諸国は米国と合同演習等を引き起こした。

これは明らかに対中国布陣。ただの演習ではあるのだが、問題の鍵はせっかくアジアから米国を追い出したのに多くの国がまたしても親米に逆戻りしてしまった点にある。

最近の延平島砲撃事件では、国際社会は一致して北を非難。中国はこの圧力下に戴秉国大人が古くさい”伝家の宝刀”六カ国会議をひっさげて北へ赴いたが、なんと韓国にも米国にもニベもなく拒否されてしまった。

この間一貫して自分はアジアの問題等やすやすと解決できるとおもっていたのが壁にぶつかった。以前はチンピラ国家に他人のガラス窓に石を投げさせて、「あいつは俺の言う事しかきかない」といばって地位を高める作戦が不調に終わったのだ。

アジアは近くの中国より遠くの米国を頼りにする、という事実はもう一つの問題にかかわってこざるをえない。つまり世界の指導者になりたければ強大な経済力と政治力だけではダメで、指導者として世界の人々を励ます信念の力が必要だ、ということだ。
中国に欠けているのはまさにこの価値観の力、ゆえにアジアの中心にはなれない。また今年10月以来、自国の異議申し立て人にノーベル賞が与えられたとき、あらゆる外交力を使って抗議し、まさにこの分野での馬鹿さ加減をさらしてしまった。

かくのごとき状況にあって中国は全面攻勢にでるのには明らかに意有って力足りず、そこで再びお宝政策である”韜晦戦術”に再び立ち戻り”中国は米国にとって変わりませんし、世界に覇をとなえたりしません、そりゃ神話です”と言い出した。

戴秉国は世界各国に”安心丸”を飲ませようと「中国的社会主義は社会発展モデルを”輸出”せず、各国の制度を尊重し、発展の選択は自由に」という。”覇権を求めず争わず”は米国向け。アジア向けに”覇権を唱えず”というわけだ。
”韜晦戦術”は中国外務省出版局もこう翻訳。to conceal one’s fame and ability”;“temporary retirement to bide one’s time before going on the offensive”,;“temporary retirement to bide one’s time before going on the offensive”「時期尚早なら能力を隠し、好機を待つ」というわけ。

なんて言ってもこの’韜晦戦術”はもう評判はあまり芳しくない。アジアの隣国はつまるところ中国は「好機到来したら虎は爪を出す」と理解している。

どうやら中国は国内の安定のために、では”周辺外交”の摩擦では「じっと我慢」の状態にあるようだ。(終)


Posted by heqinglian on 12/10/2010
何清漣さんの原文はhttp://voachineseblog.com/heqinglian/2010/12/chinadip/

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