再掲:米グレグソン国防次官補による2010年7月27日の下院軍事委員会公聴会における発言に関するNHK報道の裏取り作業結果

■概要
『米高官“日本は負担増やすべき”』という見出しの下記のNHK報道の一文について、その裏を取るべく、当日の下院軍事委員会の公聴会記録を辿りました。結果、グレグソン国防次官補は単に「負担を増やすべき」という考えを示すだけでなく、日本政府は「防衛費全体並びに防衛費における在日米軍駐留費負担額の割合を増やし、日本国民の安全と保証に対するコミットメントを示すべきだ」という一歩踏み込んだ自らの考えを、公式な証言として表明していることがわかりました。

以下、問題の一文に対する実際の発言(原文)とその仮訳です。

■問題の一文(NHKの報道より)
『グレグソン次官補は、公聴会に提出した書面の中で、いわゆる「思いやり予算」について、「同盟の鍵となる戦略的な柱であり、負担のさらなる削減は、地域の友好国や潜在的な敵に日本が安全保障に力を入れていないという誤ったメッセージを送る」として、日本は負担を増やすべきだという考えを示しました。』

出典:米高官“日本は負担増やすべき”7月28日 9時4分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100728/k10013005451000.html

■実際の発言の当該箇所(《》は強調)

○英文
"However, further reductions in HNS signals to both friends and potential adversaries in the region that Japan does not take its commitment to its defense seriously. 《To the contrary, Japan should increase its overall defense expenditures and HNS funding levels as a proportion of the defense budget to demonstrate its commitment to the safety and security of the Japanese people.》"

○仮訳(「」は強調)

しかし、在日米軍駐留経費(host nation support、以下HNS)の更なる削減は、域内の友好国と潜在敵国の両方に対し、日本が自国の防衛に対するコミットメントを真剣に考慮していないという誤ったメッセージを送ることになる。寧ろ日本は、「防衛費全体並びに防衛費におけるHNS負担額の割合を増やし、日本国民の安全と保証に対するコミットメントを示すべきだ」

出典:米下院軍事委員会公式サイト公聴会記録より、
http://armedservices.house.gov/hearing_information.shtml

グレグソン国防次官補の証言ステートメント。
http://armedservices.house.gov/pdfs/FC072710/Gregson_Testimony072710.pdf

■個人コメント

正直、驚きました。この元米大平洋軍司令官は、本気で日本政府に対し防衛費削減傾向に対する釘を刺すつもりのようです。しかも、いわゆる「思いやり予算」だけでなく、1976年来維持されてきたGNP1%枠維持の防衛費全体までも、増額の対象とすべきという主張を行っています。これが、これからグアム協定の履行において日本側に負担の増加を求める交渉を行っている最中に行われた同盟国政府高官の発言としては、適当といえるのでしょうか。我々日本人も相当に舐められたものです。

日本の国会はこの発言について、政府に米国の真意を質すことを求めるべきでしょう。次官補の上官である国防長官に、米国は、グアム移転に伴う必要経費の増額に上乗せして、在日米軍駐留経費負担の増額を求める意図なのかどうか、国会として、政府として、その言質をとるべきです。下院軍事委員会でのステートメントは、個人発言ではありません。マキシマムな発言責任を伴う、宣誓に基づく証言です。この発言はただごとではありません。

以上

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